山郷から世界の舞台へ 「ニブン合唱団」
【◎文/羅健宏 ◎翻訳/有田夏子 ◎写真提供/尼布恩合唱團】
2023年7月、高雄六亀区のニブン合唱団が、平埔族とブヌン族の古謡をもとに創作した曲を歌い、「世界合唱大会」(World Choir Games)オープンコンペティション部門でみごと金賞を受賞した。同合唱団にとって、2018年に続く二度目の金賞受賞である。
ニブン合唱団の練習場所となっている「ニブン学堂」の一階には、70人近くが集まっている。その多くは、月一回の練習のために外地から故郷に帰って来たメンバーたちだ。指揮者を務める陳俊志さんは、2017年にニブン合唱団を設立した。「ニブン」とは、ブヌン語で「歯」を意味するが、これは陳俊志さんの本業が歯科医であることにも関係している。陳俊志さんは、もともと高雄の市街地で歯科診療所を開業していたが、14年前に六亀区に招かれ、多くの学校の合唱団を指導した。六亀の土地が好きになり、診療所を六亀に移転しただけでなく、「ニブン人文教育ケア協会」を設立し、地元の学生たちに自習部屋や無料の学習指導を提供している。現在、ニブン合唱団も同協会に帰属している。
ニブン合唱団には、歌を愛する青少年たちが集う。音楽や学業の面で支え合う彼らは、まるで大きな家族のようだ。先輩たちが進学の夢をかなえる姿を見て、後輩たちにも自信が生まれる。陳俊志さんは、「メンバーの結びつきが、舞台での力の源であり、それがニブン合唱団が他と違うところ」だという。
今年度ニュージーランドで開催予定の世界合唱大会に向けて、ニブン合唱団では、六亀区の新威社区に独自に伝わる「新民庄調」の客家民謡を収集している。当地のお年寄りから収集した古曲に新たな命を吹き込み、新たな音楽を創作し、生まれ育った山郷の歌声を、再び世界の舞台へと響かせるために。
ニブン合唱団(Nibun Chorus)
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