台北の城隍と夏のイベント

【文: Jenna Lynn Cody】
【編集: 下山敬之】
【写真: Samil Kuo、台北霞海城隍廟】
台北の大稲埕にある迪化街は、日本統治時代の商店が立ち並ぶ賑やかな通りです。その中には台北霞海城隍廟という建物があります。規模は小さめですが、色とりどりの装飾や様々な活動が行われていることから、近隣の建造物よりも歴史があるように感じられるかもしれません。1859年に建てられたこの廟は、160年以上の間、この地域の宗教的中心地として存在してきました。また、迪化街南側の活動の中心地でもあります。
ここは台北でも有数の歴史的スポットであり、特に毎年の夏には城隍の生誕を祝うために多くの人が訪れます。毎年6月に開催される「台北霞海城隍文化祭」では、暖かくなってきた大稲埕を散策し、歴史と活気に満ちたこの街を楽しむことができます。
霞海城隍廟の歴史
台湾の多くの都市には城隍廟があります。城隍はその都市に関係する神様で、現世とあの世の両方で民衆を見守る存在です。城隍という言葉は、「都市(城)」と「濠(隍)」に由来し、都市の境界を守護する存在です。人々は天災から守ってもらえるように神様に祈ると、城隍悪霊を退散させ、疫病を沈めると考えられています。
霞海城隍廟の広報‧文化を担当する吳孟寰(ウー‧モンファン)氏は、「城隍は都市を守る市長のような存在です」と話します。そして、「霞海城隍廟は台北で最も古い城隍廟です」と付け加えました。
霞海城隍廟の歴史は独特で、1821年に中国の廈門近郊の霞城という町からの移民によって台湾に持ち込まれました。当時は万華地区にありましたが、万華の剥皮寮(ボーピーリャオ)で移民集団同士の抗争が勃発したため、1853年に大稲埕へ移設。このとき、38人の男性が霞海城隍廟を守るために犠牲となっています。彼らは現在もこの廟に祀られており、霞海城隍と共に邪気を払っているとされています。こうした背景から、1859年に現在の廟が建てられるまで仮住まいをしていました。
霞海城隍廟に祀られているのは人の勇士のほか、城隍の妻(幸せな結婚と気配りのできる夫に恵まれる)、月下老人(仲人神とも呼ばれ、運命の相手を見つける手助けをする)など数多くの神様です。中には日本統治時代に備えられた仏像もあり、宗教の融合を感じさせる廟となっています。また、廖添丁という人物もここに祀られています。彼は19世紀台湾のロビン‧フッドと呼ばれており、裕福な家から盗んだ金を霞海城隍廟に隠し、貧しい人々に配っていた人物です。
しかし、1920年代から1930年代にかけて、台湾のお茶を輸出するための会社が設立され、この地域は繁栄を始めました。呉氏によれば、「この廟は改築されたことはあっても、拡張されたことはありません」。この廟は清朝時代の面影を今もなお色濃く残しています。
城隍と大稲埕を巡る
この巡行は、七爺八爺の名でも知られる謝将軍と范将軍らが率いる「軍隊」とともに城隍が各地を巡ります。謝范将軍は「八家将」の2人で神様の偉大さを表しています。巡行に参加する面々はその年によって異なり、獅子舞、龍舞、その他の八家将など様々です。
このパレードは夏の暑い時期に行われるため、城隍を迎えるために外に出た若い女性が暑さで体調を崩し、失神してしまったという伝説があります。城隍は倒れた若い女性を自分の元に置いたといいます。これを止めるために、城隍には妻が授けられました。そして、既婚女性が城隍の妻に家庭円満を祈るという風習が生まれたのです。
あまり知られていませんが、実は城隍の巡行は1つだけではありません。地元の人や観光客が集まる昼のパレードに加えて、旧暦の5月11日に夜に開催されるパレードもあります。厳粛に執り行われるこのパレードでは、城隍はお供を率いて都市の四方の境界となっている土地神と帰綏街にある普願宮を訪問します。最北端は哈密街の近くにある和安宮です。この廟の信徒とは、1853年の万華における抗争で同盟を結んでいた歴史があるため、巡行の際には必ず訪れます。
夜のパレードの目的は、悪霊を追い払い、街から疫病をなくすこと。「パレードが夜に行われるのは、悪霊が出てくる時間帯だからで、城隍はそれを退治します。そのために軍隊や将軍といったお供が必要なのです。夜のパレードは狭い路地にも行きますが、そういうところに悪霊がいるのがその理由です」と呉氏は説明してくれました。
霞海城隍文化祭
霞海城隍廟は伝統を大切にしつつも、それに固執することはありません。近年は大稲埕の地域社会と協力し、城隍の誕生日の数週間前に「霞海城隍文化祭」を開催しています。この祭りの目的が、大稲埕の伝統と歴史に焦点を当て、この地域の継続的な活性化を支援することであるためです。
特に大稲埕には長い歴史があるので、伝統文化を知ってもらいたいのです。また、文化祭に訪れた方の多くは地元のお店で買い物をしてくれるので、地元産業への貢献にもなります」と呉氏は話します。
その他の関連行事
霞海城隍廟は城隍の生誕祭と文化祭を主催するだけでなく、ドラゴンボートチームのスポンサーにもなっています。今年のドラゴンボートレースの開催1週間前、廟から大稲埕埠頭までの小さなパレードが行われ、参加チームを祝福しました。また、この活動により、城隍は水辺の守護を強くすることができると考えられています。
一方、台北で最も有名な縁結びの神様を祀っていることから、七夕に行われる台北市主催のイベント、台北バレンタインデー(大稲埕情人節)にも関わっています。このイベントは霞海城隍廟の近くにある大稲埕埠頭で行われ、最後には淡水河の上で華やかな花火が打ち上げられます。
外国人観光客も霞海城隍廟の文化行事に参加する機会はたくさんあります。伝統的な巡行パレードに参加したり、オンライン活動に参加したりなどです。「城隍生誕パレードの魅力は直接参加して頂くとよく分かります。展示や伝統儀式を見たり、漢方薬や喫茶店を訪れたりと楽しみ方はそれぞれです。ぜひ古くから伝わる台北ならではのライフスタイルと雰囲気を感じてみてください」と呉氏は話します。
台北霞海城隍廟
住所 大同区迪化街一段61号
営業時間 06:16~19:47
▶️台北霞海城隍廟公式サイト:http://www.tpecitygod.org/jp-about-xia-hai01.html
▶️霞海城隍文化祭情報:https://www.religiouscarnival.com/edcontent.php?lang=en&tb=5
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