八仙六代園 台北での「グリーン革命」

六代続く関渡の農場を経営する王宣智氏(右)と鄭亦真氏(左)は、初となるサスティナブルな農法を取り入れました。
六代続く関渡の農場を経営する王宣智氏(右)と鄭亦真氏(左)は、初となるサスティナブルな農法を取り入れました。

【文: Rick Charette】

【編集: 下山敬之】

【写真: Samil Kuo、八仙六代園】

昨今、世界では国連が定めたSDGsを受け、飢餓の根絶と環境悪化を低減するために、持続可能な農業が推進されています。台北にも、この目標の達成に尽力する人たちがいます。台北最大の水田、八仙六代園を経営する王宣智(ワン·シュエンズー)氏と鄭亦真(ジェン·イージェン)氏のご夫妻は、先進国台湾の農業においての変わり者の部類と言えるでしょう。お二人は、台北で農業を営む若い農家です。持続可能な農業を実践しながら、農場で都市住民向けのワークショップを開き、健全な土壌の重要性、持続的に生産される食品の健康効果やその美味しさなどを伝えています。

彼らの農場は、台北の北西に広がる肥沃な関渡平原の基隆河と淡水河が合流する流域です。その源流は、清らかな水が湧き出る雄大な陽明山塊であり、麓には北投温泉もあります。ここでは、都市と自然がまじり合う台北で農業を営むお二人の話を紹介していきます。

グリーンサステナビリティ

八仙六代園の主作物は稲ですが、他にもトウモロコシ、大根、タケノコ、ロメインレタス、プチトマト、新タマネギ、イチゴ、グァバ、パッションフルーツなども栽培しています。彼らが目指すのは、持続可能な農法のモデルとなることと、その普及です。農場は予約制で団体客を受け入れており、持続可能な農業についての講義や季節ごとのイベントへの参加、時期に応じた農作物の作付けや収穫を体験することができます。

私たちは台北最大の米農家であり、唯一持続型の農法を取っています」と王氏は語ります。彼らは受け継いだ土地の管理者として、鳥や動物、虫と共存しながら、土壌を改善していく責任と信念を持っています。「都会の方で農家の暮らしを知っている方はほとんどいません。特に若い方は、食べ物がどこから来ているのかも理解していないので、そういった方々にも、大地と触れ合う機会を作ってあげたいです」。

持続可能な農業とは具体的に何なのか、という質問を頻繁に頂くそうです。「簡単に言えば、食料生産と生態系保全の均衡が取れた農業です」。水資源の保全、肥料や農薬の使用量の最小化、ゼロ化、生物多様性の推進などを目標としていると王氏は答えます。

王夫妻の持続可能な農業戦略については、「害虫は特定の植物を好むので、輪作によって虫害を最小限に抑えるとともに、自力で栄養分を生成できる植物を栽培し、肥料の使用量を抑えています。八仙六代園では、非合成‧完全無農薬の肥料を使用し、完全に天然で毒性が全く無い栽培方法を採用しています。また、米の収穫は年1回とし、その間は休耕したり、土壌を肥沃にする被覆作物を植えたりして、土地を休ませています」。

家族から受け継いだ農場

鄭氏の家庭は六代にわたり、この土地で農業を営んできました。農場の「八仙六代園」という名前を直訳すると「八仙の六代目の庭園」となります。「八仙(バーシエン)」はの農場のある関渡地域の名前で、鄭氏は一族の六代目です。「実際には六代以上前からここに住んでいるのですが、詳しいことはわかりません。先祖は大地主の下で働く小作人で、六代目というのは一族の初めて家が建てられた確実な日付から数えています」と鄭氏は言います。

もともとご夫妻は都市部で農業とは無縁な生活を送っていました。高齢になった鄭氏の祖父から農場を受け継いだのは数年前のことです。王氏は「実践しながら学んできました。年長の家族から多くを学び、また自分たちでも農業の講義を受けることで、基礎から先端技術まで知識を広げてきました」と振り返ります。

台北の農業発展史

大学で歴史を専攻するほど歴史が好きな王氏によれば、かつての台北の農業と現在とでは、米の加工が大きく異なるそうです。台北ではかつて、米を台北西部の大稲埕に運び、加工していました。大稲埕は、「稲を天日干しするための広い土地」という意味で、鄭氏の祖先も米を乾燥させるために、近所の関渡埠頭から船で米を送っていました。この埠頭は現在、「藍色公路」という遊覧船の発着場となっています。現在、米の加工はすべてその場で行い、天日干しをしています。

もう一つの大きな変化は、台北の平地にある農園が徐々に姿を消していることです。台北盆地は面積が狭いことから、住宅や商業施設を開発によって土地が圧迫されますな。「関渡平原にはまだいくつかの農園が残っていますが、内湖区の果樹園や文山区の猫空地区の茶屋など、その多くが観光業に転換してしまいました」と王氏は言います。平地における農業の衰退は、他の先進国と同様、若者が農業に従事しなくなってしまったからというものも含まれているそうです。

グリーンサステナビリティへの障害

持続可能な農業に関するた障害について尋ねると、「一番は年長の家族でした」と鄭氏は答えてくれました。「年配の農家はなかなか変化を受け入れず、自分たちのやり方にこだわるので、当初は私たちの新しいやり方に賛同してもらえませんでした。ですが、『食べていける』ことをはっきり示すと、考えを変えてくれました」。

持続可能な農業の大きな問題は収穫量の低下です。手作業での除草など、肉体労働がはるかに多いため、王夫妻の農地ではその全てを持続可能な農法に移行できていません。「私たちの作物は健康なので、鳥やリスなどの小動物、虫が頻繁にやってきます」と王氏は言います。対策といえば、畝の間に虫取り用の粘着テープを貼るくらいで、一般的な農家が行う対策をほとんど取っていません。年に1度しか収穫をせず、収穫量も少ないために、価格も高くなるため、消費者の中には価格に対して強い抵抗を感じる人もいるそうです。

「持続可能な方法で生産された食品の健康価値を理解されている方々は、価格が高くても安全な作物をお求めになります。私たちは農場で採れたものをほぼ直売していますが、ファーマーズマーケットには参加をしていません。参加するためには生産量を増やす必要がありますし、価格交渉を受けることになるからです」。

グリーン体験会

八仙六代園では、土日祝日を中心に不定期で農業体験を開催しています。日程は季節ごとの作付けや収穫の必要性に応じて変わります。目標は都会の人たちが自然と触れ合うことで、自然との関わりに関心を持ってもらい、のい長期的には都市の生活スタイルそのものが変わるうことです。「その一環として台北の方々に、先祖伝来の農法の素晴らしさを伝えたいのです。そうすることで、よりヘルシーで、見た目も良く、栄養価の高い色鮮やかな農作物ができます。地球環境を意識することは、自身の健康にもつながりますし、より良い食べ物、消費サイクル、生活習慣を意識することにもつながります」と王氏は話します。

この農場の繁忙期は、2~3月の田植え、6~7月の稲刈り、9月のタケノコ刈り、11月以降の大根掘りです。主作物を輪作する合間に、トウモロコシや花などを植え、土壌に栄養を与えますす。「夏に訪れるのが一番オススメです。米が一番きれいに色づきますし、キレイに咲いた花も見られます」と鄭氏は勧めます。

王氏によれば、「田植え体験や大根掘り体験は特に人気です。子供たちは『汚いものはダメ』と教わるので、最初は泥まみれになることをためらいますが『汚れる』ことが必ずしも悪いことではないと分かると、泥の中を楽しそうに歩き回ります。また、大人も子供も宝探しのような大根掘り体験が好きなので、大きなものや美味しいものがどこで掘れるかを自ら学びます。他にも農業食品に関する。DIY、特にジャムや保存食作り体験が人気です」。

「私たちも都会の人間ですが、実は都会での暮らしに居心地の悪さを感じていました。今の私たちは、自然と共存する都会人です。毎日忙しいですが、土地との健全な付き合い方を見つけたことで、都会の中にあるオアシスでの暮らしにもこの上なく満足しています。台北ではの人工物と自然のバランスをとろうとする人が増え続けているので、そういった人たちの指針を作ることが私たちの目標です」と王氏は話してくれました。

八仙六代園

住所 台北市北投区承德路七段401巷551号

営業時間 09:00~17:00

サイト facebook.com/beitoubaxianfarm

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