阿基師─ 北投市場は名料理人の道場

聯合新聞網 TAIPEI

文 師瑞德

写真 林煒凱

阿基師は、料理の第一歩は食材の特性を理解することと考えます。

朝もずいぶん早い時刻、「阿基師」が北投中央市場でお買い物。目立たないよう気をつけてはいたものの、やっぱりお母さんたちに気付かれ、笑顔を浮かべ親しげにあいさつを交わします。人がたくさん集まって来て店に迷惑がかかると心配し、慣れた手付きで野菜を掲げ、売り子として商売をお手伝い。全ては誰かのため、料理人である前に一人前の人間であること、それこそ阿基師が「国民的料理人」の一人として人気を集める理由にほかなりません。

2階建ての建物を中心とする北投中央市場は長い歴史を持ち、店に備え付けられた木製のイスが特徴的です。新富市場と同じく日本時代から続く公設市場で、広々とした空間にさまざまな店が並び、各種青果がそろっているほか、全土から集まった低価格の雑貨、新鮮なカキ料理、蒸しパン、滷肉飯(肉そぼろご飯)などの小吃(軽食)も有名。ここならではのお茶の文化も発達しています。北投市場は台北市最大の公設市場というだけでなく、北投市民の生活の中心となっているのです。

この昔気質の市場は小規模な改築を経てもなお、人情味を色濃く残し、まるで世の中の縮図のように行き交う一人ひとり、商店の一軒一軒に物語を読み取ることができます。阿基師のような名料理人も、この庶民的な北投市場に心を深く動かされるところがあるようです。

市場の食材を生かし

最高の料理を

名料理人でも細部を大事にするのがすべての第一歩です。阿基師は必要なものが何でもそろう北投市場が大のお気に入り。食材の種類も豊富で選択肢が広く、「よい修練の場となる」とその理由を語ります。「私にとって伝統市場の最初の印象は食べること。小さいころ大人と一緒に買い物に来ると、いつも台湾式の小吃をたらふく食べてたよ。食べ続けていると味の善し悪しが分かるようになり、そしてその理由をさかのぼって追究することで食材に関する知見を深めることになった。料理の第一歩は食材の個性を理解することだ。料理を学びたければ、まず頭脳を研ぎ澄まし食材を選ぶ目を養うこと。ひらすらレシピを記憶するのでなく、柔軟な対応ができるようさまざまな要素の組み合わせを熟知すること」

長年にわたり料理を作り続けてもまだ情熱は消えていないのでしょうか?そう聞かれた阿基師は声を大にして答えます。「消えないよ、もちろん。だって料理を作って誰かに食べてもらうのが大好きなんだから!」阿基師は仕事場のホテルにも、自宅のキッチンにも小さな実験基地を設けています。彼の作る料理は全て、他人の手を借りず自分で考案した独自スタイルなのです。

阿基師は「私にとって最大の娯楽は海外の料理番組を見ることなんだけど、その中で伝統的な市場の重要性を強調していないものがあるかい?国内外のさまざまな市場を探訪してその土地の風土や情緒を理解し、その上で自分が学んだことをおいしいごちそうに変えるんだよ」と、情熱的に語ります。

ただ一方で、「型にとらわれず自由な発想を生かすところが素晴らしい。でも、私ならしっかりした基礎の上に、現地の特色にぴったりの発想を生かす。奇想天外なでたらめはアイディアとは言えない」と強調します。それは阿基師が北投市場の人情味を素材に、日本時代の風味を加え、台湾ならではのおいしさを生み出すやり方に似ています。

阿基師は例を挙げて説明します。「日本式のどら焼きは普通、小豆あんを挟むけど、私は一度、『梅乾菜 』(カラシナなどの塩漬けを乾燥させたもの)を挟んで客家風にしてみたことがある。梅乾菜はゼラチン質を豊富に豊富に含む豚の皮といっしょに煮込む必要があるけど、煮込めば煮込むほど柔らかく、まとまりやすくなる。決してバラバラになったり、食感が悪くなることはない。その後、梅乾菜にたっぷりの油をたらし、そのまま置いて粗熱を取る。どら焼きの皮は砂糖だけでなく、味を引き立たせるために醤油を加えて炙る。そうすると、伝統的な客家料理と日本風の食べ物が融合した新メニューの出来上がりだ」

人生を謳歌し美味と人情を提供

「雪菜炒腐包」という簡単なメニューに人生哲学がたっぷり含まれ、口に入れると豊かが味わいが何層にも広がるように、阿基師は台湾式料理のおいしさの秘密はその純粋さにあると考えます。雪菜(カラシナの塩漬け)は台湾料理で非常によく使われる食材で、背景には客家の食文化があります。濃い味付けでご飯が進むため、台湾ではまだ生活が苦しかった時代、食卓でいちばんのごちそうでした。

阿基師は常々、「あらゆる方面に気を配れる人にならなければならない」と説きます。さらに料理人としては「お客さんの今回の食事の目的は何か?誰と一緒に食べるのか?など、テーブルの上に広がるあらゆることを考慮する必要があり、それが食材の選択や料理を出す順番にも関わってくる。料理に火が通ったかどうかだけに気を取られていてはいけない」と訴えます。

阿基師は、料理を作ることは一人前の人として生きることに似ていると話します。「ホテルでは年中行事のたびに、料理を作り終えた後、テーブルを一つ一つ回ってあいさつやおしゃべりに応じればお客さんはとても喜ぶんだ。私の腕を引っ張って一緒に写真を撮ったりね。そんな時は『私の写真は限度額の高いクレジットカードと一緒、いくらでもお好きなだけどうぞ』なんて冗談も飛ばすんだ」お客さんにいつもどおり幸福な味わいを提供するだけでなく、惜しみなく人情を注がなければならないと強調します。

北投市場を巡ったこの日も、阿基師が店の人のために快く売り子役を演じると、市場全体に人情味あふれる温かさが満ちました。

雪菜炒腐包(雪菜とゆばの炒め物)は簡単に見えますが、口にすれば人情味あふれるおい...

[レシピ]

雪菜炒腐包

材料

生ゆば 4枚

雪菜 300g

ネギ 1本

ショウガ(千切り) 1かけ

にんにく(みじん切り) 大さじ2

赤トウガラシ 1本

ごま油 大さじ3

作り方

ゆばをよく洗い、フライパンで表面を焼いた後、小さく切る

雪菜を炒め、いったん取り出す

雪菜を炒めたフライパンにごま油大さじ3を敷き、ゆばと雪菜を入れる。ネギ、ショウガ、ニンニク、赤トウガラシを加えて炒め、香りを出す

水を入れて食材のうま味を出し、水気がなくなるまで煮詰め、かき混ぜて盛り付ける

調理のコツ

雪菜自体が塩漬けのため、雪菜を洗った水は捨てずに鍋に入れる水として使えば、塩を加える必要はない。

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《TAIPEI》英日文季刊每逢3、6、9、12月出刊,主要結合本府各局...

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